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神戸地方裁判所 昭和31年(ワ)315号 判決 1960年3月09日

主文

被告は原告に対し別紙目録記載の建物を明渡し、かつ昭和三十年三月六日よりこれが明渡ずみまで一ヵ月につき十万五千円の割合の金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は、第一項のうち金銭支払の部分に限り、原告において担保として百万円を供託すれば、仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し別紙目録記載の建物を明渡し、かつ昭和三十年三月六日より明渡ずみまで一ヵ月につき十二万円の割合の損害金を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因を次のとおり述べた。

「別紙目録記載の建物(以下本件建物という)は元訴外小林防火塗料株式会社の所有であつたが、原告は昭和三十年三月五日同訴外会社より貸付金に対する代物弁済によつてその所有権を取得し、同日、昭和二十九年三月二十五日にした代物弁済の予約による所有権移転請求権保全仮登記に基づき、所有権移転登記を了した。

ところが、被告は本件建物を使用するにつき、原告に対抗する何の権原も有しないのに、原告が所有権を取得の当初からこれを占拠して、第五松竹パチンコ店の商号でパチンコ店を営んでいるのである。

よつて、原告は被告に対しこれが明渡と原告が所有権を取得した日の翌日である昭和三十年三月六日よりこれが明渡ずみまで一ヵ月につき十二万円の割合の賃料相当の損害金の支払を求める。」

以上のように述べ、被告の抗弁に対し「その主張の賃貸借契約の存在ならびに原告がこれを承認したとの点は否認する。仮に、みぎ契約があつたとしても、これによる賃借権は原告に対抗することができないものである。」と述べた。

そして証拠(省略)

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、「原告主張の事実は、原告が本件建物の所有権を訴外小林防火塗料株式会社より取得したことおよび被告においてこれを占有使用していることはいずれも認めるが、その主張の賃料額はこれを否認する。被告は、本件建物について原告に対抗できる賃借権を有するものである。すなわち、被告は昭和二十九年九月二十八日小林防火塗料株式会社から賃料一ヵ月八万円、敷金三百万円の約定で賃借し、じらいこれを占有使用しているものであり、原告会社は、これが所有権を取得した後、みぎ賃貸借を承認したものである。ただし、賃料額は、原告が従来の八万円を認めず、原告の都合で協定に至らないままになつている。」と述べた、証拠(省略)

別紙

目録

神戸市生田区北長狭通一丁目十四番地上

家屋番号第七十六番

一、木造鉄板葺三階建店舗一棟

(建坪三十二坪二合一勺、二階坪三十坪九合八勺、三階坪二坪二合三勺)

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